院長お酒物語
●うまい酒を求めて

子供の頃、お正月やお盆になると、母の実家へ遊びに行くのが楽しみでした。
大好きなお婆ちゃんがいたからです。そして総勢14名の従弟達との遊び、山の中にある母の実家は子供心にもアドベンチャーな世界でした。魚とり、虫取り、きのこ狩り、黒曜石掘り、そして御柱の木落とし坂、日が暮れるまで野山を駆け巡ったものです。
夜になると大人たちはもちろん宴会、宴たけなわになると、トイレでゲーゲーやっているさえない男がいました。父でした。好きな割には大して強くない父は、日本酒を飲むと悪酔いするのです。(ビールはOK)「なぜ日本酒を飲むと悪酔いするのだろう?」好奇心の強い父はいろいろと調べ1つの結論に達しました。
父の達した結論とは次のような事でした。本来日本酒は、米と米麹と水によって作られるものであるにもかかわらず、エチルアルコール(消毒用エタノール)や甘味料、化学調味料、人工香料などが添加され、これが悪酔いの原因である。というものでした。エタノールで水増しして、炭で濾過し、薄くなった味を(エタノールは無味無臭)補うために、甘味料、化学調味料で味付けし、人工香料で風味を出す。最悪の酒を飲んで悪酔いしていたのでした。(当時はそんな酒ばかりでした)それ以来父は、純米酒(全ての酒が純米造りなのが本来の姿)を飲むようになり、悪酔いする事はなくなりました。
やがて成人した私も酒をたしなむようになり、そして酒の味に目覚めてゆくのでした。もちろん、大手酒造メーカーの大量生産の酒には目もくれず、地方の手造りのいわゆる「地酒」を楽しむようになりました。しかし、この頃大きな壁にぶちあたったのです。それは「純米酒なのに旨くない」でした。これが解決するまでには10年以上の歳月がかかりました。そんな思いの中で、ある患者さんと出会いました。羽村で鮨屋を営んでいた方でした。治療中、酒談義に花が咲くようになったある日「この酒飲んでみてよ」と一本の酒を渡されたのでした。石川県の「加賀鳶」純米吟醸酒でした。「こんなに旨い酒があるのか!」体中に衝撃が走りました。
それ以来「純米で旨い酒」を探し始めたのですが、連戦連敗。近所の酒屋やディスカウントの酒屋では、旨い酒は手に入らない事が分かってきました。そして遂に旨い酒を売っている酒屋を探し出したのです。鶴川団地の商店街にある「まさるや」でした。店主は全国の旨いといわれる酒蔵を訪ね歩き、味見をしていました。ここは日本酒だけでなく、本格焼酎の品揃えも良く有名です。「まさるや」に通うようになり様々な旨い酒を飲み、マニアックな情報も手に入るようになりました。
そして、「純米酒なのに旨くない」に対する解答も大分分かってきたのです。それは、アルコールなどを添加する前提で造った純米酒に、アルコールなどを添加しなかった純米酒、まあ簡単に言えば「いい加減に造った純米酒」という事ですね。
現在、信頼できる酒屋の数も増え、酒蔵見学や美味しい日本酒の会などに行ったり、また主催できるようになりました。和食と共に日本の食文化のすばらしさを絶やす事のないよう、後世に伝えていきたいと、気持ちを新たにする今日この頃です。
後列左から、「十四代」高木顕統氏、一人おいて「天明」鈴木明美さん
前列中央は、漫画家の高瀬 斉さん(一升瓶を持っている人)
右隣が当院院長の降幡、左隣は「まさるや」店主
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